都市対抗野球

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プレーバック PLAYBACK

光輝なる夏
―08年都市対抗野球大会プレイバック―
歴史的な勝利と屈辱的な敗戦。
2年連続出場の都市対抗本大会に見た光りと影は、
セガサミー野球部の大きなエネルギーとなり得るか――。

 パソコンのキーボードを押す手が、言葉を並べるたびに何度も止まった。込み上げる悔しさ。それが現実だとわかっていても、試合原稿を書く僕の感情は、時の経過とともに大きな塊となっていった。
 2008年9月4日。第79回都市対抗野球大会2回戦で、セガサミー野球部の08年夏の挑戦は終わった。3点リードで迎えた9回裏、勝利まであと一死と迫りながらの敗戦。もし、野球の神様がいるならば、あまりにも残酷な試練をチームに与えたものだと、僕は目に見えない存在を、一瞬、恨んだ。それだけに、ふと考えてしまう。
 選手やチームスタッフの思いは、いかほどだったか――。
 試合後、ベンチ前で歓喜に沸く一塁側スタンドを呆然と見つめるエース・上津原詳の姿が、すべての人々の思いを象徴していたような気がする。
 創部3年目の夏。思えば、6月4日の都市対抗一次予選初戦から始まった3ヶ月の激闘には、喜びと苦悩が混在していた。予選を間近に控えた5月のJABA九州大会では、2回戦で三菱重工長崎に0-6の完封負けを喫した。試合後、中軸を担う佐藤俊和は「バラバラです。チームが一つになっていない……」と危機感を漂わせていたものだ。投手陣は、ある程度の計算はできる。だが、いかんせん打線が思うようにつながらない。投打の歯車が噛み合わない試合が続く中で、2年連続都市対抗本大会出場は決して楽観視できる状態ではなかった。不安は、予選に入ってからも続く。
>  二次予選初戦で東京ガスに延長12回の末に惜敗。負ければ終わりの敗者復活戦、一回戦の全府中野球倶楽部との試合では随所に野手の凡ミスが出るなど、2-1で勝利はしたが明るい材料は皆無に等しかった。
 だが、続くNTT東日本との敗者復活二回戦。9回裏に1-1の同点に追いつき、延長11回に城下尚也の左越えのサヨナラ打で勝利を収めた。一度は敗戦を覚悟した試合だったに違いない。だが、それまで見られなかった勝利への執念が土壇場での同点劇、そしてサヨナラ劇を生んだ。結果、その一戦で吹いた勝利の風を手放すことなく、チームは2年連続で都市対抗本大会出場を決める。撰田篤GMは、予選を振り返り「NTT東日本戦でチームは変わった」と実感を込める。
 さらに、予選のMVPは? そんな質問をすると、笑いながらこう語ってくれた。
「選手以外だったら、川上(哲矢)かな。ここ一番という勝負どころの試合前のジャンケンで、勝って後攻を取ってくれた。それが結局、サヨナラ勝利につながったからね」
 先攻め、後攻めは、試合前に両チームのマネージャーがジャンケンをして決めるのが通例である。撰田GMの「絶対に勝ってこいよ!」の言葉を受け、入社1年目の川上マネージャーは何度となく大きな働きをしたというわけだ。まさに、チーム一丸となって掴んだ第三代表――。

 予選終了から約1ヶ月後の7月18日からは、北海道千歳市で夏季キャンプを行なった。予選のチーム打率.232という数字を踏まえて、野手は連日のように早出特打ち、ランチ特打を行なうなど、打力強化に努めた。予選終了から本大会までのオープン戦は、12試合を戦い1勝9敗2分けに終わったが、攻撃パターンを試す中での戦い。あくまでも結果に過ぎないという観点から言えば、チームに重い空気は漂っていなかった。昨年、東京ドームを経験した選手たちには、良い意味での余裕が芽生えていたと言える。
 迎えた都市対抗本大会初戦。1年ぶりに足を踏み入れた東京ドームでの選手たちは、一様にリラックスした表情を浮かべ、ほどよい緊張感に包まれていた。
「これだけの人の前でプレーするのは初めてなので緊張します」
 試合前にそう語っていた入社1年目の荒木治丞ですら、グラウンドでは周囲の雰囲気に後押しされるように軽快にシートノックを受けていた。
「ギリギリのところでベンチ入りできました」
 そう苦笑い浮かべながら、東京ドームの雰囲気を楽しんでいたのは同じく1年目の安井正也である。
 七十七銀行との初戦は、息を呑む投手戦となった。スコアは1-0。上津原の好投が光り、東京ドーム初勝利を掴んだセガサミー野球部は、新たな歴史を刻んだ。それは、偶然の産物ではない。確かな足取りで目の前の階段を一歩ずつ上がってきたチームの成長の証と言える。2回戦では苦汁をなめさせられることになったが、終盤まで打線が理想的な展開を見せて大いに観客を魅了した現実もある。主将という重責を担いながら、自身初となる1試合2ホーマーを放った照屋真人。> 第一打席に入る前、撰田GMから受け取った小さなお守りをユニフォームのポケットに忍ばせながら、3打数2安打1本塁打と気を吐いた佐藤俊和。彼らに代表された勝利への執念や渇望を全面に押し出すプレーは、今でも僕の脳裏から離れようとしない。また、応援団コンクールで敢闘賞を授賞したセガサミー応援団を中心に、2試合で9千5百人を動員したスタンドの光景は、社会人野球というフィールドの中においても価値あるものだったと、改めて思う。
 光り輝き、誇るべき08年夏――。
 野球の神様が与えた試練をおのおのがしっかりと乗り越えた時こそ、新たな道は切り開かれる。そこにはきっと、さらに大きな輝きが待っているはずだ。(文/スポーツライター・佐々木亨 写真/政川慎治)>

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