NEWS
- NEWS
スポーツライター 佐々木 亨氏によるオープン戦 戦評(8/26 SUBARU戦)
1点ビハインドで最終回を迎えた。イニングの先頭である代打の宮川和人が四球をもぎ取ると、三塁側ベンチの空気が変わった。続く7番砂川哲平が犠打をきっちりと決めて走者は得点圏へ。声を張り上げて「雰囲気作り」に徹する陶久亮太を中心に、三塁側ベンチがさらに活気づく。
「ヨッシャァァァ~!」
「いけるぞ~!」
「一気にいくぞ!」
グラウンドに向けられる声は相手投手の心理状態に多少なりとも影響しただろうか。8番政野寛明、9番北川智也が連続四球で一死満塁。選手たちの勝利への執念、そこにあった熱気がビッグチャンスをもたらした。その好機で打席に立ったのは、左のスラッガーの澤良木喬之だ。この試合においては、代打の切り札である。澤良木は初球から果敢に攻めた。ファウルになるも、ファーストストライクから積極的にスイングする姿が相手バッテリーにプレッシャーを与える。ボール球が3球続き、カウントは3ボール1ストライク。押し出しの四球だけは避けたい相手投手の焦りが伝わってくる。そんな状況下での5球目、ストレートがストライクゾーンにスーッと入ってきた。澤良木は、その一球を逃さなかった。打球が左翼手の頭上を越えていく。2人の走者がホームへ還った。
逆転サヨナラ勝利。
その背景には、投打の粘りがあった。2回裏は、二死から6番須田凌平がレフト前ヒットで出塁。7番北阪真規がレフトフェンス直撃の二塁打を放って先取点を奪った。4回裏は、5番大谷拓海がチェンジアップをとらえたライトへのソロアーチを放ってリードを2点に広げた。先発マウンドを担った草海光貴も攻撃陣同様に着実に「0」を並べる好投だ。四死球の多さは今後の課題だが、3イニングスを投げて4奪三振の無失点。投打の良さが光る中で中盤5イニングス目を迎えた。5回表には、3番手で登板した東範幸が死球を挟みながら1失点。一死一、三塁とピンチが続く中でマウンドに登った飯田大翔が代わった直後にショートゴロの間に1点を奪われて同点に追いつかれる。それでも6回裏、6番須田の二死からのタイムリーヒットで1点を勝ち越すなど、この試合での攻撃陣には「取られても取り返す」力強さと粘りがあった。
投手陣も然り。5回途中から登板した飯田は7回表にも同点打を浴びたが、そのピッチング内容は決して悲観するものではなかった。むしろ、随所で見せたゲームを引き締めるような力感溢れるピッチングは、チームに勇気を与えるものだった。飯田が振り返る。
「今日は初めからブリブリと腕を振って思い切っていきました。失点はしましたが、変化球でカウントを整えることもできて内容的には悪くなかったと思います」
西田真二監督も「今日の飯田はコントロールが良かった」と評価するほど、飯田のピッチングには、その後のサヨナラ勝利を予感させるようなエネルギーが詰まっていた。8回表に勝ち越しを許すが、7番手で登板していた陶久が9回表をきっちりと三者凡退で抑えた。再び良い流れを築く中で最終回を迎えられたことも勝因の一つだったと言える。陶久は言う。
「投打がかみ合ってきた」
まさに言い得て妙だ。チームの現状が、その言葉に凝縮されている。








日時/場所 | 2020年8月26日(水)12:00~ セガサミー野球場 |
---|---|
結果 | セガサミー(三塁側) 5-4 SUBARU(一塁側) ※9回サヨナラ勝利 |