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BATTERY

横田、前原、松永、上津原-佐藤

戦評COMMENT

歓喜に沸く一塁側を、彼らは微動だにせず見つめていた。
自然と涙が浮かんでくる。悔しさが感情を奪い、ただ呆然と目の前に広がる光景を見つめている選手もいた。先発マウンドを担った横田哲も、その一人だった。
「悔しい。もちろん悔しいですよ、決勝で負けるのは。でも、何て言うか……その時は、ただボーっと相手を見ていた感じです」
大会を通じて4試合に先発、決勝でも気迫のピッチング(6回を投げて3安打1失点)を見せた横田は試合後、ベンチ前の手すりに腰掛け、ただジッと一点を見つめていた。
本来なら、涙が出るほどに悔しかったはずだ。自他共に認める「負けず嫌い」。やられたら、やり返す。それが横田の流儀でもある。日本一まであと一歩と迫りながらの敗北。それは、横田にとって何よりも悔しい現実だった。だからこそ、試合直後は負けを認める心境にはなれなかったのかもしれない。悔しい感情があまりにも大き過ぎて、ある種の放心状態になってしまった。
悔しさなんて味わうはずがない。三塁側の誰もがそう信じて挑んだ決勝の舞台だった。
試合の前半は、その気持ちが漲っていた。
1回表。マウンドに上がった横田は、先頭打者をわずか3球でショートフライに討ち取った。2番打者も3球でセカンドゴロに。3番打者は、1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた。上々の滑り出し。ストライク先行のピッチングに、149球を投じた前日の準決勝の疲れは感じなかった。
2回表も安定感は揺るがない。先頭打者の三塁線への難しい打球をさばいた宮之原裕樹の好守、さらに右中間寄りの右前安打で果敢な走塁を見せた5番打者を、好返球によって二塁で刺した右翼手・政野寛明の堅守も光るなか、横田は快調に「0」を刻んだ。
3回表からの3イニングスも三者凡退。4回表には、3人の打者をわずか6球で討ち取り、無失点を継続した。持ち前の「打たせて取るピッチング」が冴えた。横田が、54球で1安打無失点に抑えた5回表までのピッチングを振り返る。
「(連投の)疲れもなく、ある意味『無』の境地で、力が抜けた状態で投げられました。相手打線が早打ちしてくれたこともよかった。リズムよく投げられたと思います」
だが、6回表。そのピッチングの歯車が、わずかに狂う。先頭打者に120キロのチェンジアップを右中間に運ばれた。三塁打。続く8番打者には、2ストライクと追い込みながら左前へヒットを許す。両チーム通じて初めての得点。後続を討ち取り追加点こそ許さなかったが、手痛い先制点を許した。試合後の横田は、一球を悔やんだ。
「6回表の先頭打者でしたね……。甘く入ったチェンジアップを打たれました。その一球がすべてでした」
悔しさを残しながらマウンドを降りる左腕。そのイニングを最後に、横田が再びマウンドに上がることはなかった。
1点――。されどその失点は、チームにとってあまりにも大きなものになってしまった。本人は「疲れはなかった」とは言え、横田は準決勝に続く連投だ。3日前にも完投していた。当然、無理はさせられない。様々な状況を踏まえ、チームは7回表から右アンダースローの前原侑宜をマウンドに送った。大阪ガスとの準々決勝で好投した右腕のピッチングに期待した。だが……結果は2失点。先頭打者への四球を皮切りに、適時三塁打もある中で追加点を許してしまった。
3点差――。さらに9回表、3番手で7回途中からマウンドに上がっていた松永大介が連打を浴びて1失点。走者を2塁に残す中、4番手で登板した上津原詳も流れを食い止めることができずに1点を失う。点差はさらに広がった。
5点差――。その背負った重荷は、8回裏まで散発3安打に抑えられて無得点に終わっていた攻撃陣には重すぎた。1番政野がチーム初安打となる右前安打を放った3回裏、一死から7番富田が初戦以来のヒットとなる右前安打を放った5回裏、さらに4番川端裕也が毎試合安打となる右前安打を放った7回裏。そのいずれも得点に結びつけることができなかった攻撃陣は、大会を通じて無失点記録を続けていたトヨタ自動車の好投手・佐竹功年投手を攻略できなかった。
それでも、9回裏。5点ビハインドの中でチームは最後の力を振り絞った。
「最後まで泥臭く戦う姿勢を見せたかった」
そう語ったのは、代打の安井正也だ。打球は三塁前へのボテボテのゴロだった。結果的に三塁手の失策となったが、安井は力の限り走り、一塁へヘッドスライディングを見せた。その一打に続いたのが、3番江藤圭樹。三遊間への打球で安井同様に一塁へヘッドスライディングを見せる。記録はショートへの内野安打となり、無死一、二塁となった。
ただでは終わらない。最後まで自分たちの野球を貫く。彼らの姿には、そんな強い気持ちが表れていた。今大会での一つの勝因でもある、チームとしての「粘り」が、そこにはあった。結局は後続が倒れて点を奪うことはできなかったが、最後の最後に勝利への執念を見せてくれた。
準優勝。
勝利を信じていた選手たちは、日本一を手にすることはできなかった。決勝では、これからのチームとしての大きな課題を突きつけられた。それでも、大会11日間を駆け抜け、社会人野球のシーズンを締めくくる大舞台で、「最後の2強」に残ったことは揺るぎない事実。選手たちは、大きな経験を手にした。
初芝清監督は言う。
「最後に厳しい投手の台所事情が浮き彫りになってしまいましたが、それでも選手たちは決勝まで勝ち上がった。今までにない経験をしました。結果的に日本一になれなかったことは悔しいですが、『まだまだ自分らには(日本一は)早いんだよ』、そう言われているような気がします。いろんな経験をした大会。チームとして、これを大きな財産にしていきたい」
5試合で毎試合安打を記録し、4番としての役割を十分に果たしたベテランの川端はこう言った。
「大会を通じて、日替わりでヒーローが生まれた。要所で打ち、そして守った。トーナメントで勝つことの喜びを感じ、そしてその難しさを改めて味わった大会でもありました。若い選手にとっては大きな経験だったと思います」
さらに、主将の江藤はこう言い、チームの成長を誓った。
「優勝するためには、ああいう投手(トヨタ自動車の佐竹投手)を打ち崩さなければいけない。もっと打ち勝つチームにならなければいけないと感じました。準優勝は、やっぱり悔しいです。優勝で喜ぶ相手チームを見て改めて悔しさが沸いてきました。チームの成長を感じ、大きな収穫もあった大会でしたが、来年はさらに成長して、あの光景(日本一の歓喜)を目標にやっていきたい」
悔しさが大きければ大きいほど、人は強くなれる。創部10年目となる来シーズン。この秋に味わった経験は、必ずや大きなエネルギーになる。その先に、あと一歩のところで手が届かなかった「日本一」の栄冠が待っているはずだ。
(文:佐々木亨 写真:政川慎治)

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2014/11/11 : トヨタ自動車戦 の試合を共有する